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フンコロガシの詩

ワッフルとシベリア

 何やら中央線沿線にある、民家でやってるほっこりカフェの「本日のスイーツ」メニューみたいなタイトルだが、あにはからんや。今回はDEVO化老人のオヤツの嗜好について述べたい。
 何度もしつこく書いているが、認知症になると瞬間的な短期記憶が苦手になり、比較的長期記憶は保たれる。ついさっきの行動や話したことはすぐに忘れるのに、やたら大昔のことを覚えているのはそのためだ。
 だからオヤツは昔ながらのモノがいい。
「残り少ない人生、せめて美味しいものを食べてもらいたい」「流行ってるスイーツが脳への刺激になれば」という思いで、DEVO化した親に新製品や高級品をせっせと買い込む向きもあろうかと思うが、美しい心持ちが褒められこそすれ、ハッキリ言って実に無駄な行為である。お金をドブに捨てることになるぞ。
 認知症になると、みたらし団子、ぼた餅、くず餅、饅頭など、子供時代に食べて美味しかった記憶が脳の奥深くに刻み込まれているオヤツしか食べない。
 コンビニのレジ近くには必ず一口羊羹や1個ずつのパックになった饅頭が並べてあり、昔は一体誰が買うんだろ?と思っていたのだが、今ではDEVO化老人のニーズが相当あるのだろうと理解している。
 洋菓子だったらワッフルやシベリア、プリンだ。ワッフルといってもベルギーのマネケンやオランダのストロープワッフルのような今風のもんじゃない、丸く焼いたフワフワの生地を二つ折りにして間にカスタードクリームを挟んだ昔ながらのモノである。コロンバンで有名だが、今や取り扱い店舗も減っているらしく、すっかりスーパーにお株を取られている。
 とにかく、ここ30年くらいで一般的になったモノは絶対にダメ! ショートケーキやアップルパイならいいが、タルトは見た目で受け付けない。
 フレンチのコース最後に出てくる美しく皿に盛られたデザート、アシェットデセールなんてもっての他である。目の前に何があるか理解できないので、食べないのだ。
 手作りスイーツも味がぼやけて感じるのか、市販品のほうが喜ばれる。
 ま、味の嗜好は人それぞれなので、会話のできるうちに何が好きなのか聞き取りしておいて、実際に食べるかどうか実験を重ねるしかない。
 ちゃんとした食事を取らないでオヤツしか食べない、とムカつく気持ちも分かるが、医師に確かめてみたところ、糖尿病などの持病がなければあまり気にしなくていいらしい。
 介護は思った以上に金がかかる。少しでも無駄を無くすお役に立てればと思い、僭越ながら「オヤツは昔からあるもので!」と申し上げる次第であります。
# by kuroshiba2007T | 2013-07-21 17:06 | 生活の知恵 | Comments(1)

野戦病院

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 このところ親父の失禁激しく、毎日の洗濯物が膨大な量だ。写真は1日に出る洗濯物である。2〜3回は洗濯機を回すので、以前より1時間早く実家へ帰るようにしている。ということは4時には家を出なくちゃならないので、自宅でのヤボ用をやっつけると自分の時間なんか全然ねぇよ!
 先日はケアマネから「朝、ヘルパーが訪問したらいたるところに便が散ってましたが、デイに行くための準備に手を取られたのでそのままにしてあります」という電話がっ。
「うぐッ、すぐに行って掃除しないと!」と焦ったのだが、続けて「空き時間を見つけてヘルパーが掃除にうかがおうと思います。時間外となりますので、点数が加算されますがよろしいでしょうか?」との提案アリ。
 もちろん、「よろしくお願いします〜」と電話のコチラ側で平身低頭になって依頼する。とはいえ、すべて他人任せも悪いので自分でも手伝うつもりで、この日は外出のヤボ用を早々に切り上げ実家に向かうも、どうやらヘルパーさんが飛び散った糞を拭いて下さった直後らしく確かにいたるところが少し濡れていた。ひたすら感謝である。
 それにしても部屋中が臭い! 何とかごまかそうと慌てて線香を焚きまくるが、臭いが混じって何とも気持ち悪くなってきた。その上、ダウニーを使って汚れもんの洗濯もしなくちゃならず、ほとんど口で息をしないとやってらんねぇ。
 こんな調子で連日ひたすら洗濯しなくてはならず、布団はすべてアクリル毛布にした。冬でもどうせ親父はエアコンの温度設定33℃なので、3枚重ねれば問題なし! 
 以前は布団をクリーニングに出したり、汚れたところだけを部分洗いしてドライヤーで乾かしたりしていたが、今や洗濯機でガンガン洗えるのでストレスも軽減。失禁した寝具の扱いに悩んでいる方に、マジでオススメしますぜ。
 物干部屋にアクリル毛布が何枚も下がっている眺めは、まるで野戦病院の如し。野戦病院を舞台にした名作映画といえば『イングリッシュ・ペイシェント』だが、私の好みはアルトマンの『M★A★S★H』である。こんなことだから一生モテとは無縁なんだろうな。
# by kuroshiba2007T | 2013-06-16 23:11 | 生活の知恵 | Comments(0)

でくのぼー

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 この絵手紙は親父がデイサービスで描いたものだ。ったく、やってくれるよな〜。何を意図してるのか、全然分からん。イカ人間? 変わったキノコ? 腹踊り? 水泳パンツらしきモノを着用しているのが、これまた「昔は水泳選手だったんだから」と誇示しているようでムカつくよな。ぜひとも、しりあがり寿先生にご覧に入れたいものである。
 私のほうはといえば、相変わらず吐き気やら頭痛やらのオンパレード。介護を長く続けていると、「自分の人生もうどうでもいいや。どうせ長生きしたって、いいことなんて何もなし!」と思いっきり投げやりになるものの、サスガに今のところはやらなくちゃならないことが多々あり、たまに病院で検査もする。
 胃カメラを飲めば「問題ありませんよ、食道もすごくキレイですね」と医師から褒められ、「じゃ、この気持ち悪さの原因は何なんだ、またストレスかよ!」とやり場の無い怒りがフツフツと沸くばかり。
 片頭痛もヒドいので小さい脳梗塞でも起こしてるんじゃないかと、頭痛外来で有名な病院で診てもらった。
 脳の撮影前には「この年齢の人だと、自覚症状がなくてもごく小さい脳梗塞はあるもんですよ」と、それなりに著名な医師から脅され覚悟はしていたのだが、結果は予想に反して問題なし!
 ただし頭を横から撮った写真を見ると、通常はカーブを描いている首の骨がバカみたいに真っ直ぐで笑っちゃうほどである。思わず「でくのぼー」という言葉が頭に浮かぶ。
 地方の伝統的な人形芝居を紹介する記事や番組でよく目にする、わら苞にブスブス刺してある木偶人形の頭をご存知だろうか。文楽や人形浄瑠璃ほどには洗練されていない、無骨な野性味あふれる面差しは好もしいものだが、わら苞からトートツに突き出た首は単なる棒でその表情との対比は何とも間抜けだ。
 本来「木偶の坊」の“坊”は棒の意味ではないのだが、役立ずなクズ人間の私の有り様と真っ直ぐな首のフォルムが妙にシンクロして「でくのぼー」という言葉が浮かんだのだ。
 ちなみに私のような首は「ストレートネック」と言って、最近増えているらしい。パソコンやスマホに向かっている時間が長いと、だんだん変型してくるとのこと。首から頭蓋骨を覆う筋肉がいつも緊張状態なので、頭痛の原因にもなる。
 だけどな、私の頭痛の原因は首の変型だけじゃないと思うぜ、きっと。
# by kuroshiba2007T | 2013-06-01 03:33 | ムカッパラ | Comments(3)

アイドル歌手志望

 もう半年ほど前の話なのだが、親父がテレビの画面に向かって「ナイッ!」とツッコミを入れていることがよくあった。
 かなりマジなので一体何なんだろ?と思い画面を見てみれば、KAT-TUN亀梨が出演している午後の紅茶のCM。「無糖なのでオニギリにもよく合う」というキャンペーンで、亀梨が「コレってアリ!」とか何とか言うヤツである。それにいちいち反応して叫んでいたワケだ。
 親父はテレビの歌番組が好きである。私は自宅ではまず見ないが、実家では介護をしながら横目で見ることが多く社会勉強させてもらっております。といっても出演者の顔ぶれはだいたい同じで、目下お気に入りの東京女子流は見たことないぜ、残念!
 ちなみに親父は歌番組を見ながら、張り合うように大声で昔の歌謡曲を歌詞なしのメロディだけで歌う。コチラはその横で洗濯物たたんだり調理したりと家事に追われてるのだが、テレビの大音響+親父の歌声がうるさくってたまらん。もう耳栓買ってこようかと思うくらいだ。
 自分が歌っていないときは、親父は気になる出演者を食い入るように見る。こないだも、Hey Say山田涼介やN.Y.C.中山優馬のソロ曲タイムに身を乗り出して見てたしな。
 そうなのだ、冒頭の亀ネタもしかり、どうやら親父は男性アイドルに反応しているようなのである。
 人さまから「昔のご職業は?」と聞かれると、教師だったクセに「オペラ歌手!」と吹かす親父だが、本当になりたかった職業は実はアイドル歌手じゃないかと思われるフシがある。いつも歌ってるのは歌謡曲ばかりだし。
 これまた古過ぎる話でご存知の方もほとんどおられないだろうが、田谷力三というテノール歌手がその昔よくテレビに出ていた。親父が師事していた原信子とともに浅草オペラで活躍していた歌手で、晩年も『夕やけニャンニャン』なんかで審査員をしていたハズ。
 その田谷力三がテレビに出て歌っていると親父は「これはオペラの唱法でなく、オペレッタ風で品がない」とか何とか言って、さんざののしっていたのだが、想像するだに自分もああいうふうになりたくてやっかんでたんじゃなかろうか。聞くところによると、田谷力三は少年時代に三越少年音楽隊に入っており今でいうアイドル歌手的な扱いもされていたようだし、東八郎や萩本欽一なんかも弟子だったらしい。
 しかしな、今さら親父がアイドル歌手志望だったと気づかされるのって、どうなのよ?
 
# by kuroshiba2007T | 2013-02-14 22:39 | ムカッパラ | Comments(0)

感謝の正月

 年始年末はデイやヘルパーさんがお休みなので親父の介護はすべて私一人にかかっており、昼から夜までと実家で過ごす時間が多くなる。
 元旦は母の命日でもあり、いつものように犬連れで墓参りを済ませてから実家へ帰った。
 そして玄関を開けた瞬間、思わず「臭いッ!」。
 案の定、親父は糞尿まみれである。ただでさえ臭いのにエアコンの設定温度が33度なもんだから、臭みが増幅され鼻が曲がりそうだ。昨日はセーフだったんだがな〜、チッ。
 部屋の暑さと臭気に引き寄せられるのか、このところ実家ではデカいゴキブリがよく出る。毎日、2匹以上をスリッパでブッ殺しているんだぜ。さすがに史上最強の生き物であるゴキブリも冬場は弱るんだろう、動きがニブいので百発百中、もしかしたら割り箸で捕らえるのも可能かも、ってな具合である。
 とりあえず、ぬるま湯に浸し清拭剤を染ませたタオルで親父の身体を拭いてからオムツ+尿取りパッド含むすべてを着替えさせる。この作業を毎朝お願いしているヘルパーさんには本当に頭が下がる。毎年、正月は心の底から感謝で始まるのだ。
 トイレや床を丹念に拭き掃除し、汚れた服やシーツ、毛布は洗濯だ。大量の洗濯物を干す二階の部屋は陽当たりが良く犬も大喜び、古びた畳の穴掘りに夢中である。そこいら辺に畳のカスが飛び散るが、まぁいたしかたない。

 正月につきものの雑煮も今年は作らなかった。作ったところで食べないので結局は捨てるから、という理由ではない。シブチンだが案外と縁起物にはこだわりたいクチなので、捨ててもいいのだ。作らない理由は、このところ親父がむせることが多くなったせいである。高齢者の肺炎は、そのほとんどが誤嚥によるものだ。昨年もそろそろヤバいかと思い、ノドに詰まりやすい角餅でなくピラピラした韓国のトックを用いて雑煮を作ってみた。何しろ半島系の詐欺師に全財産だまし取られたというのに、親父は韓国が好きだからな。しかしいくら好きとはいえ、韓国の知識はほとんどなくトックが何やら不審な食べ物と映ったのか、全然食べなかった。古い記憶にある食べ物以外は受け付けない、という認知症の症状である。
 ちなみに自宅でも一人正月だが、雑煮と簡単なお節風のプレートは用意する。今年の雑煮は牡蠣を入れてみたところ、大正解。それを食べた後は酒飲みながら『TOP GEAR』『シャーロック』『SONG TO SOUL〜永遠の一曲〜クリムゾン・キングの宮殿』と再放送ばかりだが、英国系のテレビ番組を見てウサを晴らしている。
 あ〜あ、明日も早くから実家へ行かないとな。感謝と鬱で始まった、いつもながらの年明けである。
 
 
# by kuroshiba2007T | 2013-01-02 06:01 | Comments(0)